データが示す:音声メディア接触後の検索行動への影響とその広告活用
はじめに
音声メディア、特にポッドキャストや音楽ストリーミングサービスの利用が拡大しています。これらのプラットフォームは、リスナーが別の作業をしながらコンテンツを聴く「ながら聴取」という特性を持つ場合が多く、その場でWebサイトにアクセスしたり、商品を購入したりといった直接的な行動につながりにくいと考えられがちです。しかし、音声メディアでの接触が、その後のユーザーの情報探索行動、特に検索行動にどのような影響を与えているのかを理解することは、メディアプランニングにおいて非常に重要です。
本稿では、調査データを基に、音声メディア接触が検索行動に与える影響を分析し、そのデータが広告戦略にどのような示唆を与えるのかを考察します。
音声メディア接触後の検索行動の実態
音声メディア接触後のユーザー行動に関する複数の調査から、音声コンテンツや音声広告に接触した後に、関連する情報やキーワードを検索するユーザーが一定数存在することが明らかになっています。
例えば、ある調査データによると、ポッドキャストリスナーの約40%が、「聴取した内容に関連するキーワードを、後で検索した経験がある」と回答しています。これは、特定の情報に関心を持ったリスナーが、「ながら聴取」中に即時行動ができない状況でも、後追いで情報収集を行っていることを示唆しています。
さらに、別の調査では、音声広告に接触したユーザーのうち、約30%が広告されたブランド名や商品・サービス名で検索を行ったという結果も報告されています。この割合は、リスナーの年齢層や興味関心、音声メディアの利用状況(例:ヘビーリスナーかライトリスナーか)によって変動が見られますが、音声広告が検索行動のトリガーとして機能している可能性を示しています。
これらのデータは、音声メディアが単なる聴取体験を提供するだけでなく、その後の能動的な情報探索行動につながる可能性があるメディアであることを示しています。
検索行動に至るまでの時間と検索内容の傾向
音声メディア接触から検索行動に至るまでの時間軸にも傾向が見られます。多くのユーザーが「ながら聴取」を行っている特性上、音声広告に接触した直後の即時的な検索よりも、数時間以内や、別の作業が落ち着いた後に検索を行うケースが多いというデータがあります。
ある調査によると、音声広告接触後に検索を行ったユーザーのうち、即時(数分以内)に検索した割合は約10%未満であるのに対し、「数時間以内」または「翌日以降」に検索した割合が合わせて70%以上にのぼるという結果が出ています。このことは、音声メディアにおける情報伝達が、リスナーの記憶に留まり、後から行動を促す効果を持つことを示唆しています。メディアプランニングにおいては、音声広告の効果測定や他のデジタルチャネルとの連携を考える上で、この時間差を考慮に入れる必要があります。
また、検索される内容としては、番組名や出演者名といったコンテンツそのものに関するキーワードの他に、広告された「ブランド名」「商品・サービス名」「特定のキーワードやフレーズ」が多く見られる傾向があります。特に、具体的な商品・サービス名や、キャンペーンで訴求された特徴的なキーワードは、リスナーの記憶に残りやすく、検索行動につながりやすいと考えられます。
ビジネス上の示唆と広告戦略への応用
音声メディア接触後の検索行動に関するデータは、広告主やメディアプランナーにとっていくつかの重要な示唆を与えます。
- 音声広告の間接効果の評価: 音声広告の効果は、Webサイトへの直接的なトラフィックやコンバージョンだけで測るべきではありません。ブランド名指名検索の増加や、広告キーワードに関連する検索ボリュームの増加なども、音声広告が貢献した間接的な効果として評価に含めることが推奨されます。データ分析においては、音声広告キャンペーン実施期間中および実施後の検索トレンドの変化を追跡することが有効です。
- 音声広告と検索連動広告の連携強化: 音声メディアで興味を喚起されたリスナーが後追いで検索行動を行う傾向があることを踏まえ、音声広告と検索連動広告(リスティング広告)の連携は非常に効果的です。音声広告で訴求したキーワードやブランド名で検索された際に、適切な検索連動広告を表示できるよう準備しておくことで、リスナーを効果的にWebサイトへ誘導し、コンバージョンにつなげる機会を最大化できます。
- 音声広告クリエイティブへの反映: 検索行動を促すためには、リスナーが覚えやすく、検索しやすい要素を音声広告クリエイティブに盛り込むことが重要です。例えば、ブランド名や商品・サービス名をクリアに、場合によっては複数回伝える、特徴的なキーワードやキャンペーン名を強調する、特定のWebサイトURLや検索キーワードを具体的に示す(CTA)といった工夫が考えられます。
- 統合的なメディアプランニング: 音声メディアを単独のチャネルとして捉えるのではなく、コンシューマー・ジャーニー全体の中での役割を理解することが重要です。音声メディアでの認知・興味喚起が、その後の検索、Webサイト訪問、最終的なコンバージョンへとつながる一連の流れをデータで把握し、音声、検索、ディスプレイ、ソーシャルメディアなどのチャネルを横断した統合的なメディアプランニングと効果測定を実施することで、より効率的な広告投資が可能となります。
結論
音声メディアの「ながら聴取」という特性は、即時的な直接行動にはつながりにくい面がある一方で、リスナーの記憶に残り、後からの検索行動を促す効果を持っています。調査データは、音声メディア接触後に検索行動を行うユーザーが一定数存在し、それが数時間後や翌日以降に行われる傾向にあることを示しています。
このデータに基づき、広告主やメディアプランナーは、音声広告の間接効果として検索行動への影響を適切に評価し、音声広告と検索連動広告の連携を強化する、検索されやすいクリエイティブを追求するといった戦略を検討することが推奨されます。音声メディアを、コンシューマー・ジャーニーにおける情報探索の起点の一つとして位置づけ、他のデジタルチャネルと連携させた統合的なアプローチをとることで、音声広告の効果を最大化し、ビジネス目標達成に貢献できる可能性が高まります。データに基づいた継続的な分析と戦略の見直しが不可欠となります。